序章
 




 それはある中学生の大会だった。中学生にして『支配者』の字を与えられた少女の公式会見である。
 全ての対戦相手を容赦ない能力により徹底的に殲滅しつくし、そもそも人間の格ごと違うと言わしめるようなその戦闘力を持った少女は、人々に恐れと言う名の信仰を与える。
 何より彼女は美しかった、和製美人をそのまま移し。鷺宮の名を持つその偉大な能力者の大家の苗字がさらに彼女の付加価値を上げていった。

 そんな彼女であるが世間ずれしているのか発言はいつも、爆弾発言に変わっていた。

 しかし大会だ勝利インタビューだ。興奮と言うことで、多少は目を外しても許されるというものだ。記者の一人が何気なく、彼女に質問した。

「やはり同い年の子では相手になりませんか?」
「まさか、私は一度同年代の人に負けてますよ」

 実際この年代は黄金期といえるほど、色々な名持ちがいる。雷帝、暴君、猪突猛進、そしてもう一人いるがこれはいろいろな意味で本当に格が違う。
 だがこの時ばかりは誰もが食いついた。

「その相手とは明王ですか」
「あの人なら勝てる可能性があります。私の言っている人はそう言う人じゃありません、強いて言うなら魔術師そう言う人です」

 騒然とした。最強の年代でも最強の支配者と明王を超える逸材がいる。この日からこの年代の一斉調査が行なわれて始めていた。
 支配者を倒した能力者を探すという。それでも支配者に魔術師と呼ばせた存在は現れる事はなかった。彼女も誰かと言うことを話す気もなかったのだろう。それ以上は口を閉じて何も言う事はなかった。

***

 はっはっは、超失敗した。
 神様がいるのなら時間をとりあえず戻して欲しい。あの女のいっている人物は十中八九俺だ、だって倒した事あるもんあの目の前の女。
 ドブに嵌めたり、ワックスに叩き落したりとか、明らかに間違った方向で勝利した記憶しか無いけどね。

 あれじゃあ能力者として格上とか言われているようなもんじゃないか。
 通り魔ばりに能力者狩りをしていたあの女に、一泡吹かせてやろうと考えていたらこんな仕返しが来るとは思わなかった。
 永久のCランクを得ている写島だぞ、ある意味レアだが、全力でマイナス方向だ。

 しかしあの女が喋ったのだろうが一部の人間にはばれた。予言の能力者が断定した永久Cランクだと言うのに、神は俺を見放した。

 目の前には柔和そうなお婆ちゃんがいるが、明らかに人を二・三人殺した事のあるやばい目をしている。足がガクガクと震えている。

 仕方ないじゃんか、怖いんだから。

「では、君は合格と言うことでいいの?」
「お断りです。永久Cランクにはこの学園は敷居が高すぎます」
「じゃあ合格と言うことで」

 この人、人の話を聞かないよね。多分年齢的にもボケが着てるんだと思うけど。
 至極迷惑だ。
 うぅ、あの婆さんまた俺をやばい目で見てる。

「写島の人間は有名ですからね。貴方のお父さんが、そういえば明日会社を首になるって言う噂が」

 脅してきた、しかもマジだあれは、折角低ランクでついた定職だと言うのに。しかも勤続二十年鬼だろうこいつ。
 ふふふ、俺は結局選択肢を持っていなかったのか。

「ありがたく合格をさせていただきます」

 結局土下座して俺は最強の能力者が集う学園 芳名学園への入学が強制的に執行された。


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