この世界では自分の異眼に問いかけ力を得る為の問いである。 それは…… 当然人によって代わる問いだ。 そしてそれが彼の解、目は門だと人間に別の世界を与えるただ一つの門だと彼は答える。その瞬間彼の眼は全てを見通す両眼の千里眼、通常両眼の異眼と言うのは珍しい。ましてや同一の異眼など普通は所有できないのが当たり前であった。そう言う意味では彼は見鬼の中でも最強の見識を担うものだろう。 実際彼の異眼は本家から見てもその異眼の能力は低く見られているが、残念ながら彼の筆頭権限は取り下げられる事はなかった。 千里眼、戦力だけなら本家さえ下すほどの血統異眼である威の坂の破眼その血統を無視して現れた千里眼、ただの千里眼ではないのではないかという一応の措置がとられたのだが事実は違う。千里眼とは見識の中でも元々究極の異眼である、彼に見えないものは無いのだ。 なら今が彼がやっている事とは何だ。 その見識において究極の異眼を持つ彼がそれを開放する以上認識する事である、彼の眼にかかり虚実を見極められない事は無く、心を把握する事が出来ないはずも無い。あらゆることを認識する目、それが千里眼であるのだ。 「さて、始めようか」 周りからは男の野太い声が響く。ジークハイル、ジークハイルと日本と言う国で、なぜかドイツ語の声が響き渡った。 「我らの勝利は確定だ、見識の友よ。我らの目はここでしか使えない、さぁ世界を繋げるぞ」 彼の鼓舞が集団の狂気を発火させる。轟々と燃える炎を彼は人の力と思い具現し、引き連れる。 「何しろこちらに負ける理由は無い、敵は我らの力を虚仮にする者達だ。さて、状況を開始しよう」 紅蓮が浮かび狂気を担う全軍のまなこが燦然と輝き続ける。 「作戦名 出っ歯の亀の無駄な抵抗、始まりだ」 そして彼らの軍勢は進撃を開始した。 世界最強の認識を持つ見鬼の集団は、今歩みを止める事も無く難攻不落に挑むのだ。 「なぁに女子更衣室など我らの前では透明硝子で作られたハリボテだからなぁ」 その彼らの前進を進める力となるのは青い情動なのだから。 *** 纏坂の系譜は最強の眼をもつ男 纏坂春斗 によって世界に名が知られる事と成った。 纏坂春斗は彼女と戦った、彼は千眼王と互として戦うだけの力を持っていたのだ。それこそが纏坂の系譜に流れる異眼である王眼、だが宗家にあっても、王眼は発現し辛い力でありましてや、両眼と言うのはそれだけで異常事態だった。当主となる資格は、王眼の発現であり普通は片目だけであるだが、春斗は王眼と帝眼、それは纏坂宗家いや初代が発現した、名家を名家たら占めた王帝眼と呼ばれる秘眼であった。 また千眼王(パーフェクトアイズ)そう呼ばれる女は、千眼と称される多分この世界最強の異眼を持つ存在である。その異眼は見識以外全ての異眼を認識しただけで発現を可能とさせる全ての異眼をコピーする、全ての異眼を飲み込むが故の千眼。彼はその男と戦い死ぬ事さえなく互角の戦いを繰り広げた。 結局千眼王を討ち果たす事はできなかったが、それでも千眼王と戦い死ななかったという事実が彼を最強の異眼使いとしての名声を広めた。 だがそんな彼にも苦手な事はある、それこそが威の坂の跡取りである一乃坂祭。 彼はなんと言うかろくでもない、彼の父親である纏坂の当主を浮気の証拠を母親に、突きつけると脅すだけならいざ知れず。その異眼の使用方法に明らかに、普通の見鬼とは思えない利己的な思考が写る。殆ど全ての人間が、異眼を所有するその中で見識の異眼は、正直言って弱い。 「でだ、君は見識の子達を先導して何をやっているのかなぁ?」 両目を封じているその異様な姿からは考えられないほどお気楽な彼は、仮にも本家のしかも跡継ぎに対して遠慮が無い。 「愚問ですよ十二代目、私はただひたすらに、この眼の無駄遣いをしたいだけです。女なんてものは付き合ってみましたが、碌なもんじゃないですよ本当に、ちょっと他の女と話をしたら一週間家に監禁したりとか、付き合い始めてすぐに婚姻届にサインしてくれっていってみたり、一日十回愛してるといわなかったら三日監禁してみたり、まさに女なんて悪夢、今思い出しても恐ろしい思い出ですよ」 だが祭りは十二代目の発言を無視して話を続ける。 「かといって誕生日を忘れていたら手に釘を打たれるし、付き合って一週間の記念日とか言って俺の童貞は奪われる。女は悪夢の象徴ですよまったく」 冗談じゃない、痛々しい釘に打たれたであろう手を見せる。春斗は当然のように顔をしかめた、仮にも世界最強の異眼使いに数えられる男として、この態度はどうかと思うと祭は苦笑した。 「ちなみにそいつの名前は寒椿ですよ。よりにも寄って英雄の異眼を持つ雷神の系譜、しかも三十代目当主ときた」 日本に存在する異眼使いの中でも最大の名家である纏坂、英雄の寒椿、支配する眼芍薬、平等の眼聖上、その一つの家であり最も抱える異眼使いが多い名家であり。雷神の系譜と呼ばれる異眼使いである。ちなみに当主以外に寒椿の名を名乗る事を許さない家であり、通常は菖蒲と言う苗字が当主以外の血脈には与えられている。 「まぁ、精神的な弱点を言葉攻めして、二度と私の前に現れないようにトラウマを刻み付けてやりましたがね」 生徒指導室でのらりくらりと適当な会話をする春斗、彼にとっては十二代目 王帝眼の春斗 は彼のそんな姿に嘆息する。他の分家や、家族とも違い、年齢が最も近い祭に対して弟のような感情を抱いている彼は、心配そうに祭を見た。たしかに彼にとってはとっつきにくい性格だが、弟を心配するのに兄が一々考えるような事も出ない。 「そんなことはどうでもいいんだけどさ」 春斗は、千眼王に対抗できる唯一の男。 *** 頭がおかしくなる。目から与えられる古今問わずの情報がいつも彼の頭を焼き続ける。 そのためには封印が必要だ。あほな事に使った代償はひどいものだったけど、まぁまだ死ぬことは無いだろう。 なんて眼だ、脳を焼くどころじゃすまないその眼の非常識さに俺はいつも涙が出そうになる。 「ったくどうにかならないもんかねぇ」 この目はありとあらゆる物を見る、それは世界だけじゃない、全てだ。あらゆる物を見尽す眼、千里眼。同質の眼を二つ持つなんて異眼使いはこの世には俺ともう一人ぐらいしか居ない。通常の片目だけの異眼使いと、両眼の異眼使いでさえその能力の差は激しいというのに、見識最強といわれる千里眼を二つも持っている。 封印してももれる視界に、自分の持つ異眼の異常性を感じて軽くなきそうになる。 一乃坂祭は、二十の年を迎える前に死に絶える。 これは確定だ、この眼が確定的に提出した。俺の寿命と言う名の視覚、震える体をいつものように押さえつけながら、いつも通り、いつも通り、そうじゃなければ怖くて動けなくなる。この眼を抉り出して死にたくなる、 冗談だろう? 死にたくなんかあるものか。だがこの目は、己の未来さえも確実に見通す。 その前にせめて、奉の敵ぐらい討ちたいんだ。 |