幕間




 

「みやびよ、あの男が芳名に入ったぞ」
「父上、それは真ですか。あの駄目人間が」

 それは松永と呼ばれた対能力者戦闘集団の宗家、分家からは御所と呼ばれる建物での話。
 父と娘はここでありえない事を話す様に、二人してその言葉は疑問系での会話だった。

「だってあの馬鹿ですよ、あの駄目人間ですよ。なぜか強いんですけど、俺は親父と同じくサラリーマンになるとか言ってたアホですよ」
「鷺宮が権力をフル活用したらしい。どうもあの家の娘は、あの駄目男に御執心の様だ」
「うわー、鷺宮って趣味が悪いんですね」

 いわれ放題である。しかも結構容赦ない感じだ。
 だがそれでも写島の血を色濃く残す破壊者であり、既にその地に相応しい戦力を示している。

「弱小ランクで不動明王を叩き潰す血脈の血が欲しいのだろうよ。我等と何にも変わらんと言う事だ」
「そうですけど、あれが許婚なのは結構納得できないんですよ」
「だがお前は簡単に負けたじゃないか」

 うっと図星を突かれた。許婚だよと言う紹介を受けたとき、冗談じゃないと目の前で舌打ちされた挙句、お前病気と言う目で見られ、しっしと手で払われた。
 その時の言葉は『パス』であったぐらいだ。当然のように彼女は烈火のごとく怒りを示した、だがなぜか彼女は池で犬神家を行なっていて敗北と言う現実だけが植えつけられる。

「いまだにあの敗北が理解できないのですけど、それで結局父上は私に何をさせたいのでしょうか?」
「芳名にいってみようか」
「会いたくないですよあんな性格破綻者、許婚といわれて無理に決まっています。生理的に勘弁してください」

 本当に散々な言われようだ。本人がいれば間違い無く酷い事になっているだろうが、ここには本人はいないのだ。凄く救われているのだろうこの二人は。

「これは当主命令だ、お前の意見なんか一言も聞いていない。あとだがあいつにお義父さんと言われるのは私だって生理的に無理だ」
「いや私だって」

 結局この二人は、写島の跡取りが大嫌いなだけであるのだが、いくらわがままを言っても写島の地は魅力的過ぎるのだろう。結局彼女は本気で泣きながら学園に行く事を了承した。

 なんというか、そこまで嫌いなら彼だって近寄るなと思っている事だろう。
 いろんな意味で最悪な許婚たちである。


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