あるオンラインゲームで伝説と呼ばれるゲーマーが居た。 そんな彼だが、あるアイテムをようやく手に入れた。 しかし彼はようやくそんなアイテムを手に入れたのだ。 「こうなったらAGIの極振りとかやってみるかな」 心弾む瞬間だ、ステータスを振りなおすのだどんなキャラクターにするかと、鼻歌だって歌いたくなる。 現状で最高レベルである279と言う彼のレベル。金や時間を明かしたありえない数の装備。 「そんな事しないけどさ。手に入れた装備が出来なくなるし」 そうだこの世界の装備は、全てステータスによって制限が掛かってくる。だから彼はそんな馬鹿なことなんてしない。 しかし彼の後悔はこの瞬間から始まる。 『やあ、君達。このショウロウオンラインを楽しんでいただいているようだが、君達をここにとらえさせていただく』 彼はその声に怯えてよりにも酔ってステータスを振りなおしてしまった。 「ちょ、え、ま、あれ、えええええ」 この時彼は絶望した。そして彼はまた伝説になるのだ。 当然の事だがレベル上げは無残な事になる。そもそも倒せる敵が初期の的しか居ない。 『そしてこれの現実から逃げ出したいものは、最後のダンジョンのボス、ネグリジェスを殺すことだけだ』 彼が昨日まで倒していたボスである。 『健闘を祈る、また最後の私の介入として、ボスのステータスを上げておいたから頑張ってくれ』 まさかこんなあほな感じでデスゲームに彼は介入するとは思っていなかったのだろう。 「せめて、せめてレベル制限であれば」 あらゆる人間が動揺を隠せない中、一人別のことで突っ伏す馬鹿。全てが偶然だった、ただ驚いてミスっただけ。 そもそもステータスの振りなおしのためだけにボスに挑むか、この世界から逃げ出すためだけにボスに挑むかを本気で考えるような状況に彼は追い込まれている。 つかえないレア装備達、もう涙なしでは語れない。しかもHPも全盛期より大分下がっている。レベルアップ分の上がりしか無いからだ、正直に言えばレベル百の戦士レベルしかないだろう。 「ありえなさ過ぎだろうこれは」 だが彼が思うのはこんなあほな回避率ならぶっちゃければボスの攻撃全て避けられる。それほどの回避率は手に入れていた。 彼の姿を知る高レベルプレイヤーも、大慌てで彼に連絡を取るが、彼に返す余裕が無いのは当たり前だ。 何しろつかえないキャラクターに命を預けなくてはならないのだ。 装備制限の所為で全裸になって、一人突っ伏す男。変態だが誰一人彼に話しかける事はない。 「俺はもうお仕舞いだ」 辛うじてスキルのお陰で底上げは出来ているものの、焼け石に水とは彼の為にある言葉に思える。どちらにしろ初心者よりまし程度の話だ。 ゲームシステムを効率よく使って雑魚キャラを作ったようなものだ。 「もうアイテムは他のやつにやるしかないか」 ようやく思考が戻ってくる頃には、彼の顔にはすがすがしいほどの『他人任せ』と言う、特殊技能が発動していた。 どちらにしろ彼にできる事は決まっていた。 「この世界から逃げ出すために、人材を育てなくてはいけないのか」 彼がこれからやるのはただの養殖のような動作だけ。 そして彼は伝説へと昇華される。 世界最強の壁と、最もそれに特に意味は無い。 「こんな現実から逃げ出してやる」 だが今現在全裸になって格好をつける姿は彼の将来を暗示しているようでならない。 |